会津塗の生産体制
会津若松は会津塗の産地として知られておりますが、その生産体制についてはあまり知られておりません。実は会津の塗物はかなり専門化された分業体制の下で生産されており、いろいろな職人や工房を経て商品として完成します。弊社は通常製造問屋として、商品の企画デザインを行いその商品に適した職人や工房へ製作や加工を依頼し弊社の商品として出荷しております。弊社は旧会津若松市内に位置し、車で10~15分以内のところに大部分の作り手が点在しており、電話だけでなく頻繁に作り手の現場を訪れ商品生産のスケジュールや品質の管理を行っております。
会津塗の多様性
会津塗と一言でいっても、実はいろいろな素材や技法の組み合わせがあります。この素材や技法を組合わせることによって多様なものづくりが出来るということが会津塗の最大の特徴です。会津には多様な素材と技術を持った作り手が集積しており、この地は未知の可能性をまだまだ秘めているというのが弊社の考え方であります。
今求められている上質感とデザイン性
今、売り場そして消費者は明らかに上質感のあるメイドインジャパンの商品を求めています。しかしながらそうした状況の中、塗物は伝統工芸品として位置付けられており、時代の流れに取り残されております。弊社では視点を変え、従来から伝わる塗物の技術と新しいコンセプトに基づく商品デザインを融合させることで、時代の空気感を感じるエレガントで上質な商品へと昇華させることを目標に設定し、ものづくりを始めております。
会津塗の可能性
ここまで会津塗の可能性についてお話をさせていただきましたが、この可能性を新しいものづくりに繋げていけるのは、実は会津の中にいる人間でなく、今まで全く係わりのなかった高い感性を持った外部の方たちではないかと弊社は考えております。このような方たちが、従来の塗物の概念にとらわれないコンセプトを、会津の生産現場に投げかけることで、今までに無い新しい商品が生まれると確信しております。
弊社は現在、そうした異分野の方たちとの塗物を通したものづくりに情熱を傾けております。ぜひ、この機会に会津塗の可能性と御社の高い感性を融合させて新しいものづくりを始めてみてはいかがでしょうか。
漆器お作りします。
会津の職人が心をこめてお作りします。
製作には時間がかかる場合がありますので、先ずはお早めにご相談下さい。
今、マーケットでは「MADE IN JAPAN」であることが求められています。
弊社では塗物の企画開発で培ったノウハウを基に、お客様の自社商品開発を初期の段階からサポート致します。サンプル製作から本生産までお客様の幅広いご要望にお応えし、競争力のある高品質な「MADE IN JAPAN」の商品をご提供致します。
お客様がクライアントから受けた特注商品の生産をサンプル製作の段階からお手伝い致します。また、塗物を使ってクライアントに商品の提案をしてみたいという方もお気軽にお問合せ下さい。
「MADE IN JAPAN」が見直されている今、法人ギフト、パーソナルギフトに日本の工芸品塗物が秘かなブームです。オリジナル商品をご希望の方にはオーダーメイドにも対応いたします。
過去の事例
自社商品とセット販売するコレクションボックスの生産依頼
主力商品がトートバックであるA社様は、自社周年記念の事業として、世界的に有名なキャラクターをモチーフにして、約60組のアーチストたちに自社トートバックをキャンパスにイラストを描いてもらい販売されております。
A社様ではこの事業のスペシャル企画として、クローゼットボックスを製作し、そこに全作品(76種類)を収納し、セット販売する計画をされ、弊社へ製作の打診をされました。
A社様のご希望は、クローゼットボックスは日本の伝統工芸の技術を生かしたメイドインジャパンで製作したい、そして、ボックスには、CRYSTALLIZED™ Elements(スワロフスキー社製)を使用して自社ロゴマークを入れたいということでした。
弊社では早速、A社様の大まかな寸方のみが記されたイラストをもとに、細かい寸法を、A社様や木地工房と話し合いをしながら割り出し、図面を製作。
その図面をもとに段ボール紙で実寸模型を製作し、実際に商品(トートバック)を納めて確認をしたり、木地工房と再度細部の検討を行い、最終図面を完成させました。
このクローゼットボックスはガルウイング構造でしかもサイズが比較的大きいことから(W89×D45×H48.6cm)、構造や強度の問題、商品の取り出しやすさ等いろいろな問題をクリアーしなくてはなりませんでした。製作にあたっては、木地、塗、加飾、内貼り、ハンガー工房のそれぞれの職人と頻繁に打合せを行い、A社様とも設計の段階からご意見を伺いながら、慎重に作業を進めてまいりました。
このコレクションクローゼットボックスは、表面塗装は手塗りによる漆塗、そして表面4面にCRYSTALLIZED™ Elementsを約8,000個使用しロゴマークを描いています。扉は両側ガルウィング構造になっており、扉を開けると鳥が翼を広げているように見えます。
A社様のケースでは、いただいたデザインイメージを出来るだけ忠実に実現することを目標に、職人と一緒にアイデアを出し合い試行錯誤を繰り返し製作させていただきました。
ジュエリーボックス等のOEM生産依頼
B社様はジュエリーボックスやフォトフレーム等のインテリア小物を自社で企画・デザイン、製造は外部へ委託、出来上がった商品を自社ブランドとして販売されています。製造は中国などの海外がほとんどですが、最近では顧客やバイヤーのニーズが「MADE IN JAPAN」にシフトしていることから、新たに高品質な日本製だけを扱う新しいブランドを立ち上げられました。B社様はその新ブランドの基幹商品の一つとして塗物のシリーズを企画され、弊社へ製作の相談をされました。B社様の場合、商品企画室という専門の部門があり、商品開発にあたっては、その商品をデザインしていらっしゃるデザイナーの方が弊社との直接の窓口になっていただきました。商品開発がスタートしてから間もなく、担当デザイナーから精確な設計図面が届き、弊社では、そのままその図面を基に木地工房と細部の検討を行い、先ずファーストサンプル製作をスタートさせました。その後完成したサンプルに改良と仕様の変更を行い、セカンドサンプルを経て本生産に入りました。今回製作したアイテムはジュエリーボックス3種類、フォトスタンド2種類、ティッシュボックスの計6アイテム。色はアイボリーとマットグレーのツートンで、どのアイテムにもCRYSTALLIZED™ Elementsが上品に配置されており、とても上品で素敵なデザインです。しかし製作にあたっては木地、塗装、加飾の他に、ミラーや金具、内貼りのベルベット等、構成部品が多くありましたので、かなり頻繁に担当のデザイナーとメールや電話で打合せを行い、それをもとに職人と検討をしていくという地道な繰り返しを重ねて作業を進めてまいりました。また、製作の過程では、B社の担当デザイナーが会津を訪れ、担当している職人を一軒一軒回り、工房の見学と打合せを行いました。商品に対するデザイナーの想いを直接職人に丁寧に伝えることができたことで、商品をより身近な存在に感じてもらえるようになっと確信しております。このプロジェクトでは、B社様がとても商品にこだわりを持っていらっしゃいましたので、弊社では品質や作り込みに特に気を配り生産をさせていただきました。
新商品発売に合わせVIP向けプレゼントの生産依頼
C社様は化粧品の製造販売をされており、今回、新商品の発表に合わせ、商品のマークと自社ロゴが入ったメイクボックスに新商品を納めてVIPの方へプレゼントをするという企画を立てられました。メイクボックスのデザインを担当されたC社様の契約デザイナーが、あるSHOPで弊社オリジナル商品に目を止められ、弊社へメイクボックス製作の相談をされました。その後、具体的なお話を持ち込まれたことがきっかけで、弊社が製作の担当をさせていただくことになりました。
メイクボックスのデザインは、弊社オリジナル製品であるハンディコンテナーのデザインを基にC社契約デザイナーが行い、サンプル作成後本生産を行いました。今回のケースでは弊社オリジナル商品をC社契約デザイナーが気に入って下さったことがきっかけであったので、弊社としてもとても嬉しく思っております。
雛人形メーカーオリジナル飾り台や屏風・衝立の生産依頼
今、会津塗は、漆器の生産で培った品質の良さ、丁寧な作業、柔軟な対応が見直され、異分野から注目されております。D社様も会津塗のそういった可能性に賭けていただいている企業です。D社様は人形作家がオーナーを務める人形メーカー。取引初年はD社様の契約デザイナーもスタッフに入り製作がスタート。D社様とデザイナーが弊社を訪れ打ち合わせを行い、製作する飾り台等の要望をお聞きし地元の製作工房を選定しました。その後、デザイナーの初回図面を元に意見交換を行い、新たな図面をもとに段ボール板を使ってモックアップを作成しました。D社様も交えてモックアップで形状デザインをチェックし、それをもとに木地サンプルを完成させました。その後、色の選定、衝立の絵柄について細かくデザイナーとやりとりを行い、最終サンプルを完成させました。しだれ桜の柄を採用したタイプの場合、デザイナーから渡されたイラストレーターのデータを弊社でスクリーン蒔絵に合うように細部に修正を加えスクリーン版データを作成しました。色の調整等も含め細かい神経を使う作業が続きました。2年目以降徐々に種類を増やしていただき、H23年は、継続商品も含め10タイプ以上を生産させていただきました。色を考慮すると20種類以上になり、職人とのコミュニケーション、D社様との調整をはかりながら生産管理&納期管理を行っていくことは、通常のお取引とは違う緊張感がありますが、お子様や親御さんが喜ばれる情景を思い浮かべながら仕事をさせていただいております。
セミナー記念品の生産依頼
E社様は、クライアントであるW社から取引先を集めたセミナーで配布する記念品を塗物で製作するように依頼され、弊社ホームページを通して製作の相談をされました。今回のケースでは、E社様ご担当者は、弊社とクライアントであるW社の間に入り、更にW社内の担当者と上層部の間にも入り、記念品のアイテム、デザイン、絵柄、仕様、パッケージ、包装が決まり発注に至るまで調整に奮闘されました。弊社では、ご担当者がクライアントから受けた質問や課題を伺いながら、漆器の生産方法の詳しい説明や、製作を担当する木地、塗り、絵付け、内装の各職人と幾度となく協議を行い、図面製作、木地サンプル製作、図案デザイン、パッケージサンプル等粘り強く対応させていただきました。お陰様で、3月中旬に初めてご相談を受けてから、4月下旬に正式発注をいただき、6月初頭に無事納品させていただくことが出来ました。いつものことですが、正式発注を受けてから納品までの期間が短く、職人と綿密にスケジュールを組んで生産に臨みました。完成した記念品は、W社の商品を収納する箱で、フタは蝶番で開き、内側は仕切りが付いた総別珍貼り、外側には商品にちなんだ図案や商品ロゴ、企業ロゴを蒔絵で全面に施した、豪華で素敵な記念品となりました。
E社様から相談を受けて納品までの3カ月間にメールのやりとりが約100回となりました。ゼロから新しいプロダクトを創り出すことは大変なエネルギーと根気強さが必要ですが、商品が完成してお客様からホッとした声で感謝の気持ちを伝えていただいた時には、このお仕事に関わることができて本当に良かったという思いでした。
そして、様々な無理をお願いして対応いただいた職人の方々にも感謝しなければなりません。ものづくりをする職人の存在なくしてお客様のニーズにお応えするこはできません。今回のE社様のケースでは、産地の素晴らしさを改めて実感させられた仕事となりました。
コミックキャラクター漆塗スマートフォンケース
F社様は、自社製作した映像コンテンツを自社の機材と施設でお客様に楽しんでいただくビジネスを展開されている会社。今回、F社様は、有名なコミックとコラボした映像コンテンツを製作したのを記念して、コミックキャラクターを描いた漆塗スマートフォンケースの限定販売を企画され、弊社のホームページを通して製作の相談をされました。当初、漆塗というだけの条件でしたので、弊社からは、ケース塗装は漆塗が可能だが、キャラクターの絵付けは色も含め著作権者の厳しい条件があるはずなので漆による手描きは難しいとお伝えし、シルクスクリーンによる多色刷りを提案させていただきました。最終的には、ケース表面に伝統技法を得意とする蒔絵職人が螺鈿や研ぎ出しの技法を使って宇宙を表現し、その上にスクリーン蒔絵を得意とする蒔絵工房がキャラクターを6回刷りシルクスクリーン蒔絵で表現する仕様となりました。弊社では早速、キャラクターのデータ化と班分け、スクリーン版製作依頼、ケースのマスキング処理、そして樹脂製ケースに漆の密着を良くする処理を施す工程を塗装工房に依頼する作業に入りました。先ずサンプル製作を行い、F社様を通してライセンス所持側の許可を得る作業を行い、何回かのやり取りの後、許可が下り、その後、パッケージの検討、パッケージのサンプル製作を経て、F社様ではネットを通して期間限定で購入予約の告知をされました。
今回のケースでは、ご相談を受けたのが10月中旬、予約分の本生産納品が翌年の2月中旬ということで、約5ケ月間あまりF社様ご担当者と弊社で120回以上のメールや電話での様々なやり取りを行い、粘り強く対応させていただきました。スマートフォンケースという小さなアイテムでしたが、そこには多くの時間とノウハウが詰め込まれることとなりました。そして、会津塗職人のチャレンジ精神と丁寧な仕事をやり遂げる粘り強さをに感謝する機会となりました。このような機会を与えていただいたF社様にも心より感謝申し上げます。
進物お線香用のパッケージ製作依頼
4月初旬、お香やお線香を生産販売されているG社様より弊社HPを通してメール、その後直ぐにお電話が入り、進物用お線香を納める塗り箱(パッケージ)生産の相談を受けました。
弊社からは、基本的には生産可能と思われるが、念のため現在使用している塗り箱のサンプルを送付いただき最終判断をさせていただきたい旨をお伝えしました。
早速サンプルが届き、このような塗り箱生産が得意な職人にサンプルを確認してもらい生産可能であるとの返事を得たので、弊社ではサンプルを採寸し図面を作成し、G社様にメールでお送りしました。その後G社様から図面に基づいた見積りを依頼されましたので、職人と協議をし、若干塗りの仕様をサンプルと変更し見積りをご提示させていただきました。
その後G社様とメールや電話でやりとりをさせていただいた結果、G社様よりフタの蒔絵を省略し無地でサンプルを製作するご注文をいただくことができました。初回サンプルは約20日間で完成させ5月中旬納品致しました。
G社様からは、サンプルの仕上りには大変満足しているが、見積り単価については、より低い単価を目指したいがどのような方法があるかという相談を受けました。
そこで職人とも協議の上、フタの形状や本体のサイズを変更することで単価をさげることが可能であることを修正した図面と共にお伝えしたところ、G社様から、修正した仕様でセカンドサンプルの製作依頼を受けました。今回は、フタに蒔絵を施して完成させることになりましたので、蒔絵の版データについてG社様に確認したところ、所有していないとのことでしたので、弊社でサンプルの蒔絵をスキャンしイラストレーターでトレースし版データを作成させていただきました。また、今回の塗り箱本体には内貼りが施されており、初回サンプル時は地元の内貼り工房に依頼したのですが、工房ではG社様サンプルで使用している布地の取り扱いがなく、G社様にも了解を得て通常漆器で使用されている起毛タイプの布地で内貼りして納品致しました。しかし、起毛タイプですと中に納める線香の細かい屑が毛に入って除去しずらいことが判明しましたので、セカンドサンプルでは、弊社でG社様サンプルと同種の布を探して入手し、全て弊社で内貼り作業を行い7月中旬納品させていただきました。
G社様では、セカンドサンプルの仕上りと単価に満足いただき、7月中旬ようやく本生産の受注をいただくことができました。商品の性格上、8月に入りお盆にかけて需要が高まることからG社様の在庫状況も踏まえ、G社様ではお盆前の納品を希望されましたので、7月の連休と8月の連休も重なりかなりタイトな製作期間でしたが、弊社での内貼りの作業も受注と同時に作業をスタートさせるとともに、木地、塗り、蒔絵のそれぞれの職人の協力を得て何とかお盆前に発送することができました。
今回ご相談いただいた商品は、いわばお客様の主力商品のパッケージということで、既に販売価格がきまっており、原価構成率も決まっている中でのお見積りご提案でしたので、弊社だけでなく各製作行程の職人にも商品の性格を理解いただき、またサイズや仕様の調整もご提案しながら交渉を進めてまいりました。相談を受けてから納品までに4カ月かかりましたが、今後も、他の商品を納める塗り箱についても弊社に検討依頼いただけるとのことですので、しっかりお客様に向き合い職人とも良好な関係を保ちながら商品開発に取り組んでいきたいと思います。
会津塗募金箱(組立式)の製作
H社様は、賃貸住宅関連の事業をされていますが、今回の案件は、H社様オーナー個人のご依頼として、会津塗募金箱製作の相談がございました。箱物なので製作が可能である旨お伝えしたが、話を伺っているうちに、募金箱を色々な場所で使用するので持ち運びし易いように組立式を希望されていることが分かりました。そこで先ず、どのような仕組みが良いか検討する必要あるので、少し期間を頂戴したい旨お伝えしました。希望サイズ、数量を確認し、組立式にする最適な方法のアイデアをいろいろ検討した結果、箱の6面を全てばらして貼箱に収納でき、組立の際には金具等を一切使用しなで箱状に組立できる仕組みを考案することができました。考案したアイデアを図面にまとめ、更にイメージイラストを作成し、H社様へ提案したところ、オーナー様の了解を得ることができ、本生産へ作業を進めることができました。
募金箱の仕様は、素地がMDF、塗装はウレタン吹付け塗装で、指定のロゴをシルクスクリーン蒔絵で側面にいれました。また、今回の塗装色は指定色でしたので、塗料メーカーでウレタン塗料を調色していただき塗装を行いました。
今回のご注文は数量が少なく、しかも組立式で特色塗装となったため、単価は通常の箱物より高くなりましたが、H社オーナー様には、大変満足していただきました。弊社としても、組立式という課題をクリアできたことで自信につながりましたが、何より特殊な形状で少量生産という難しい仕事に対応いただた各職人の存在がなければ実現できませんでしたので感謝したいと思います。
分骨されたご遺骨を納める容器の製作依頼
3月中旬、仏具の製造販売を手掛けるI社様から、分骨されたご遺骨を納める容器の製作相談を受けました。
I社様では既に図面を作成されており、早速メール添付いただいた図面を基にI社様のご依頼内容を確認させていただきました。
依頼内容としては、図面の商品を製作した場合のサンプル生産及び本生産時の見積りの提案、そして見積もりが良ければサンプル生産に進みたいとのことでした。
そこで、弊社では、ご依頼いただいた商品の開発に適する素地と塗装の工房を選定し、それぞれの工房と協議を重ね、見積もりをまとめI社様に提案させていただきました。
最終見積り提案までには、素材の変更や、塗装の仕様変更など、I社様と何度もやりとりを重ね、見積りも数回提出致しました。
最終見積り提案後、4月下旬ようやくサンプル生産の依頼をいただきましたが、その際に弊社も含め2社に同じ内容でサンプル製作を依頼している旨お話がありました。
6月下旬サンプル納品させていただきましたが、7月下旬I社様より、今回の商品開発については別な会社に依頼することになった旨、丁寧な報告を受けました。理由としては、弊社のサンプルの仕上りには十分満足しているが見積りにおける本生産時の納期が想定より遅いことが問題になったとのことでした。
職人にとっては今まで手掛けていない新しい商品の納期について、どうしても長めに設定してしまいます。また弊社でも納期については余裕を持って設定してしまう傾向があり、当初からお客様のご希望に沿う形での納期設定が出来ていませんでした。しかし、実際に量産を経験させていただくと、お客様の急な要望にもお応えできる自信があるのですが、なかなか難しい部分です。
今回I社様よりサンプル製作のご依頼をいただいたことにより、職人には材料や技術的な部分についてメーカーへ問い合わせてもらったり、弊社でも新しい材料の入手に奔走したりと、新しいものづくりの引き出しを増やすことができました。この経験を次のお客様の商品開発依頼に活かしていきたいと考えています。
漆塗りアクセサリーの製作依頼
12月下旬アクセサリーの製造販売を手掛けるJ社様より、漆塗りブローチ製作の依頼を受けました。ブローチは黒、朱、白、青の4種類の色で、形状は丸と三角の2種類を組み合わせ、スパッタリングの技法で模様を付けて展開したいとのことでした。
早速、弊社では、この商品開発に最適な職人として若手女性の塗師を選定し、J社様の要望を伝えて協議を進めていきましたが、会津側では、特に青と白の色漆について色漆特有の色味や性質をしっかりお伝えする必要があることから、メール等でご説明させていただきました。
その後、色漆の性質についてご了解を得ることが出来ましたので、お見積りをご提示させていただき、1月中旬、木地はJ社様からの支給でサンプル製作の依頼をいただきました。
サンプルは2月中旬完成し納品させていただきましたが、途中、弊社が出展していたテーブルウエア・フェスティバルの会場(東京ドーム)に担当者とデザイナーの方にお越しいただき、ご挨拶をさせていただきました。
サンプル納品後、小売スペースで販売したいので量産したい旨の打診をいただき、職人にもその旨伝えておりましたが、その後、新型コロナウイルス感染拡大を受け小売店舗が営業自粛で閉鎖となり、また消費活動も悪化したことから、量産は当面断念するとの連絡を受けました。その後、国の緊急事態宣言が解除されましたが新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、先行きも不安なため、この先の展開は当分見込めない状況が続いています。
会津塗り絵皿を額装した寄贈品の製作依頼
3月中旬、K社様より、船舶内に飾ることができる「額装された会津塗り絵皿」の製作について製作打診を受けました。絵皿には今後進水式を予定している船舶を描き、船主に寄贈したいとのことでした。
一品オーダー品として一からスタートしなければならず納期的に厳しかったのですが、既に希望サイズの漆塗り丸皿の在庫を弊社で持っていたこと、そして弊社でこの案件に適する判断し選定した蒔絵師から納期的に可能であるとの回答を得たことから、絵皿が完成するまでの間に額装のデザイン、仕組みを考え製作すれば、希望納期に間に合うと判断し、K社様に製作可能である旨お伝え致しました。その後直ぐにこの案件を先に進めていきたいとの連絡をいただき、先ずは絵柄のデザイン、額装のデザイン、見積りについて提示して欲しいとの依頼を受けました。またK社様からは、まだ船舶の完成写真が存在しないので似た船舶の画像を送るので、先ずはこちらを参考に絵柄のデザイン案を考えて欲しいとのことでした。また船舶の名前に花の名前が入っていることから、その花も船舶と一緒に描いて欲しいとの要望がございました。
弊社では、蒔絵師にその旨伝え、色鉛筆等で図案試作を依頼しました。並行して自社内ではどのように絵皿の額装を行うかの検討をスタートさせました。額装について決めなくてはならないポイントとして、どのように凹型の漆塗り絵皿を固定するか、会津塗を施した厚みのある額をどのように造作するか、完成した額を船舶内壁面にどのように固定するか、に絞り検討していきました。
最終的には、額縁はMDF板で4辺を中空状にして組立て軽量化を図り、ウレタン吹付け塗装で仕上げることに致しました。また、絵皿の固定は絵皿専用の固定金具を入手し、額縁の壁面への固定についても荷重を分散できような専用金具を入手することでクリアできると考えました。
その後、寄贈先船舶の画像も届き、最終的にK社様に絵皿の図案、額装デザイン、全体の仕様、見積り単価をご提示させていただいたところ、直ぐに受注することができました。
額装については頭で思い描いた通りに完成するか正直不安がありましたが、いくつかの調整作業を行いながら完成させることができました。絵皿については、漆による本格的な手描き蒔絵にもかかわらず短時間の作業で素晴らしい絵を描いていただき、K社様にも満足していただきました。
実は受注前後から、日本でも新型コロナウイルス感染拡大が懸念されるようになり、該当する船舶の外人乗組員が入国できない状況が続き進水式が延期されていた関係で納期も延びていたのですが、ようやく4月下旬納品させていただきました。その後、K社様から贈呈式が無事行われたとの連絡が入り、さらに船舶内壁面に額を掛けている作業風景の写真も送られてきて、弊社としても、お客様のお役に立つことができたと実感することが出来て、大変嬉しく感動致しました。
これからも、弊社へご相談されたお客様の希望が叶えられるよう、職人と連携しながら最適な解決方法をご提案させていただきたいと思います。
蒔絵ブローチの開発
L社様は、貴金属アクセサリーの企画製造販売を手掛ける企業です。この度、伝統工芸の技法でブローチを開発したいということで、弊社へお問合せいただきました。
ご希望の内容を伺ったところ、原画と黒蝶貝を支給するので、シルクスクリーンで絵付けをしてもらいたいとのことでした。さらに黒蝶貝に絵が密着するよう絵付け前にクリア下地塗装を施し、また最後に絵を保護する目的でクリア塗装でトップコーティングも施して欲しいとのことでした。
そこで先ず原画をメール添付で送ってただきスクリーン版に起こせることを確認し、改めて原画とサンプル用の黒蝶貝を送っていただきました。
弊社では原画をスキャンし、先ず色や蒔く粉の種類を考慮して版構成を検討し、その後アドビイラストレーターで版ごとに作図していきました。蝶貝サイズが30×40mmと比較的小さいので、蒔絵師が版合せ等作業し易いように考慮しながら6回刷り用製版データを完成させました。
次に完成したイラストレーターのデータをアドビフォトショップへ読み込み、色付けと紛蒔きのシュミレーションを行い、完成イメージ(案)としてJPEG画像を作成し、L社様にご提案させていただきました。
尚、担当する蒔絵師は、弊社でこの案件に相応しいと考える蒔絵師に事前に声をかけ内容を伝えおり、版分け等随時相談しながら製版データ作成作業を進めていました。
絵付けに向けた作業と並行して、この案件に対応できる塗装工房を選定し、先ず下地塗装とトップコーティングで使用する塗料の選定について検討と検証を実際の黒蝶貝で行いました。時間をかけて数種類の塗料を実験して漸く納得できる塗料を決定することができました。
完成イメージ(案)についてL社様の了承を得ることができましたので、地元の製版会社へスクリーン版の製作を依頼しました。完成した版と下地塗装を施した黒蝶貝を蒔絵師に渡し、まずサンプル1個の絵付けを行い、最後に塗装工房でトップコーティングを施し、完成したサンプルをL社様へお送りしました。
L社様は、サンプルに大変満足いただき、直ぐに他の数種類の絵柄についても同じようにサンプル製作を弊社に依頼されました。
最終的には、5柄展開で本生産のご注文をいただき、納品させていただきました。その後もブローチを納める塗りケースや、手描きによる絵付けのご相談をいただき、地元の作り手と共に検討させていただいております。
創業10周年記念モデルの生産
S社様は、高級オーディオのアンプや周辺機器を製造販売されていらっしゃいます。S社様は創業10周年を迎えるにあたり、自社商品に漆塗りを施した10周年記念モデルの生産を計画し、弊社にその生産の相談をされました。そこで、弊社は、東京でS社様担当者とお会いして詳しくお話をお聞きし、生産可能であることをお伝えしました。その後、ご担当者は社内に持ち帰り、他産地での生産の可能性も含め検討を重ねていらっしたましたが、最終的に会津塗で生産することを決定し、弊社へ正式に記念モデル生産に向けて作業を進める依頼をされました。
S社様が希望する仕様は、既に販売している人気のオーディオ機器の木製筐体に黒漆塗りを施し、更に筐体上面に本格的な蒔絵を描きロゴを入れて完成させるというものでした。弊社では、先ずS社様が希望する仕様を実現してくれる職人を選び協力を依頼し、それぞれの行程の細かい作業内容を検討していきました。また、蒔絵の図案の提案も依頼されていましたので、先ず弊社で記念モデルに相応しい図案のコンセプトを考えS社様にプレゼンし了解をいただきました。その後、蒔絵師とそのコンセプトを共有し、蒔絵師に図案を複数考案してもらい、S社様ご提案させていただき最終的に採用する図案を決定致しました。
S社様は、国内外のオーディオ展示会で記念モデルのオーダー活動をするためのサンプルを希望されましたので、先ず1台を生産し納品させていただきました。その後、S社様は各種展示会で受注活動を行い、最終的に本生産分の数量をまとめ、弊社へ発注されました。
今回のケースでは、最初に相談いただいたのが1月、サンプル納品が4月、本生産分納品が12月となり、1年がかりのプロジェクトとなりました。仕様が手塗りによる漆塗りと呂色磨き仕上げ、そこに手描による平極蒔絵と本金蒔絵によるロゴ入れを施すという本格的な会津塗でしたので、納期の心配や品質へのこだわり等、緊張を強いる仕事が続きましたが、各職人がしっかり仕事をしていただいたことで、ギリギリの納期でしたが無事納めることができました。
その後、S社様からは、素晴らしい記念モデルが出来たとお褒めの言葉をいただき、職人と喜びを共有させていただきました。今回このような仕事をいただいたことで、改めて会津塗が幅広いニーズに適応できる産地であることを実感できました。
海外向け筆記具用ケースの製造
T社様は、ファッションブランド、ジュエリー&アクセサリーブランドへ各種パッケージや商品ケースを提供していらっしゃいます。今回T社様は、筆記具メーカーから海外向け商品を納める塗箱を依頼され、弊社へ生産の相談をされました。
T社様では、筆記具メーカーより塗箱のサンプルを預かっておりましたので、弊社では先ずその画像をメールで送ってもらい生産可能であることを確認させていただきました。その後、T社様からサンプルを送っていただくとともに、納期、数量、仕様等の条件をお聞きし、木地工房、塗り工房と協議を重ねました。また塗箱を納める貼箱についても、筆記具メーカーのこだわりがあったことから、使用する貼り紙や塗箱を包む紙等の選定等、地元の紙器メーカーに相談をしながら、納得のいく仕様にまとめさせていただき、最終的なお見積りをご提示させていただきました。お陰様で正式発注をいただき、無事に塗箱を納めることができました。
今回の塗箱は、商品のパッケージとして使用するので、コストも抑える必要があることから、素地はMDF、塗装はカシュー塗装という仕様での生産となりました。弊社では、ご依頼品の性格により、様々な生産手段の中から最適な方法をご提案させていただき、お客様のニーズにお応えしております。
T社様のケースでは、最初に相談をいただいたのが2月、そして納品が7月ということで、5ヵ月の間、T社様はクライアントの筆記具メーカー様と会津側の間に立って、粘り強く調整と交渉をされました。心より感謝申し上げます。